隠し部屋の秘境

豆知識的な小ネタ見つけては投稿していきます

「和分の積」演算の性質

電気抵抗でよく見かける「和分の積」ですが、電気分野では非常に多用するが故に演算子まで用意されている程なのです。

和分の積とは次のような演算。

 \color{#ff0000}{R_{1}//R_{2}=\dfrac{R_{1}\times R_{2}}{R_{1}+R_{2}}}

見ての通り和分の積の形をしてます

しかし計算する時、あまり工夫されながち

 

にも関わらず、調べてみると意外にも基本的な性質を結構持ち合わせていたのでまとめていこうと思います。

既に自分で編み出していて、他の人に秘密だった方には申し訳ない。

 

結論から述べると次の性質を持っています

目次

性質
  1. 分配法則「k(R₁//R₂) = kR₁//kR₂」
  2. 交換法則「R₁//R₂ = R₂//R₁」
  3. 結合法則「R₁//(R₂//R₃) = (R₁//R₂)//R₃」
  4. 逆数の公式「1/(R₁//R₂) = 1/R₁ + 1/R₂」
  5. 近似公式「R₁//R₂ ≈ R₁ (R₁<<R₂)」
番外
  • 最後に

 

解説を始めます

1.分配法則

 \color{#ff0000}{k(R_{1}//R_{2})=kR_{1}//kR_{2}}

全体の定数倍が個々の定数倍になるというやつですね。早速証明していきます

証明

 \color{#0000ff}{k(R_{1}//R_{2})=k\times\dfrac{R_{1}\times R_{2}}{R_{1}+R_{2}}\\\ =\dfrac{k\times R_{1}\times R_{2}}{R_{1}+R_{2}}\times\dfrac{k}{k}\\\ =\dfrac{kR_{1}\times kR_{2}}{kR_{1}+kR_{2}}\\\ =kR_{1}//kR_{2}}

[完]

2.交換法則

 \color{#ff0000}{R_{1}//R_{2}=R_{2}//R_{1}}

値が入れ替え可能というやつです。

証明

 \color{#0000ff}{R_{1}//R_{2}=\dfrac{R_{1}\times R_{2}}{R_{1}+R_{2}}\\\ =\dfrac{R_{2}\times R_{1}}{R_{2}+R_{1}}=\\\ R_{2}//R_{1}}

[完]

3.結合法則

 \color{#ff0000}{R_{1}//(R_{2}//R_{3})=(R_{1}//R_{2})//R_{3}=R_{1}//R_{2}//R_{3}}

演算の優先順位が入れ替え可能というやつです。もはや、まるで足し算ですね(本当は全然違うと思います)

証明

 \color{#0000ff}{R_{1}//(R_{2}//R_{3})=\dfrac{R_{1}\times (R_{2}//R_{3})}{R_{1}+(R_{2}//R_{3})}\\\ =\dfrac{R_{1}\times \dfrac{R_{2}\times R_{3}}{R_{2}+R_{3}}}{R_{1}+\dfrac{R_{2}\times R_{3}}{R_{2}+R_{3}}}}

分母と分子にR₂+R₃を掛けます

 \color{#0000ff}{=\dfrac{R_{1}\times (R_{2}\times R_{3})}{R_{1}(R_{2}+R_{3})+R_{2}\times R_{3}}\\\ =\dfrac{R_{1}\times R_{2}\times R_{3}}{R_{1}R_{2}+R_{1}R_{3}+R_{2}R_{3}}}

一方、

 \color{#0000ff}{(R_{1}//R_{2})//R_{3}=\dfrac{(R_{1}//R_{2})\times R_{3}}{(R_{1}//R_{2})+R_{3}}\\\ =\dfrac{\dfrac{R_{1}\times R_{2}}{R_{1}+R_{2}}\times R_{3}}{\dfrac{R_{1}\times R_{2}}{R_{1}+R_{2}}+R_{3}}}

分母と分子にR₁+R₂を掛けます

 \color{#0000ff}{=\dfrac{(R_{1}\times R_{2})\times R_{3}}{R_{1}\times R_{2}+R_{3}(R_{1}+R_{2})}\\\ =\dfrac{R_{1}\times R_{2}\times R_{3}}{R_{1}R_{2}+R_{1}R_{3}+R_{2}R_{3}}}

以上より

 \color{#0000ff}{R_{1}//(R_{2}//R_{3})=(R_{1}//R_{2})//R_{3}=\dfrac{R_{1}\times R_{2}\times R_{3}}{R_{1}R_{2}+R_{1}R_{3}+R_{2}R_{3}}}

[完]

また、優先順位が入れ替え可能とわかったので

R_{1}//R_{2}//R_{3}=\dfrac{R_{1}\times R_{2}\times R_{3}}{R_{1}R_{2}+R_{1}R_{3}+R_{2}R_{3}}

も定義できるだろうという訳です

 

さて、上3つの超基本性質に続き、

和分の積特有の性質について触れていきます

4.逆数の公式

 \color{#ff0000}{\dfrac{1}{R_{1}//R_{2}}=\dfrac{1}{R_{1}}+\dfrac{1}{R_{2}}}

全体の逆数が個々の逆数の和となります。というか和分の積はこの式から導かれています。

中学生にとってはこっちの方が常識なのだけど、和分の積ユーザーにとっては忘れがち

今回はこの式そのものを証明します。

証明

並列回路の図です。

f:id:theEasyPuzzle666:20220605222806j:image

図のようなR₁とR₂の並列接続の合成抵抗を、R₁//R₂で表すとするとオームの法則よりI=V/(R₁//R₂)と表せます。

一方、それぞれの抵抗に着目すると

I₁=V₁/R₁, I₂=V₂/R₂です。

ここでI=I₁+I₂ より先程の式を代入することで

 \dfrac{V}{R_{1}//R_{2}}=\dfrac{V_{1}}{R_{1}}+\dfrac{V_{2}}{R_{2}}が求まります。

V₁=V₂=Vなので

 \dfrac{V}{R_{1}//R_{2}}=\dfrac{V}{R_{1}}+\dfrac{V}{R_{2}}

となって、最後に両辺をVで割ると

 \dfrac{1}{R_{1}//R_{2}}=\dfrac{1}{R_{1}}+\dfrac{1}{R_{2}} [完]

 

長くなった割に中途半端に端折ったので分かりづらいかもしれません。ここを詳しく知りたい場合は他の方の記事が分かりやすいと思います。

一応この右辺を変形していくと

 \dfrac{1}{R_{1}}+\dfrac{1}{R_{2}}=\dfrac{R_{2}}{R_{1}R_{2}}+\dfrac{R_{1}}{R_{1}R_{2}}\\\ =\dfrac{R_{2}+R_{1}}{R_{1}R_{2}}

これが \dfrac{1}{R_{1}//R_{2}}なので

R₁//R₂ はその逆数 \dfrac{R_{1}R_{2}}{R_{2}+R_{1}}

→和分の積が導かれます。

 

5.近似公式

 \color{#ff0000}{R_{1}//R_{2}\approx R_{1} \,\,(R_{1}\ll R_{2})}

R₂がR₁に比べて非常に大きいとき、R₁が支配的になるというものです。

<<はその極端な大小関係を表す記号です。

工夫が云々言いましたが、これは普通に使われます

証明

R₁<<R₂よりR₁+R₂ ≈ R₂なので、

 \color{#0000ff}{R_{1}//R_{2}=\dfrac{R_{1}R_{2}}{R_{1}+R_{2}}\\\ \approx\dfrac{R_{1}R_{2}}{R_{2}}=R_{1}}

[完]

 

最後に

ここまで読んで頂き、有難うございました!